ヒトにとって体毛は退化し、熱を外に逃がす効果にすぐれた「発汗」という仕組みが発達しました。
長時間運動できる能力を身につけたのは、発汗という体温調節機能が備わったおかげといってもいいでしょう。
一般的に、胸や背中のような体幹部のほうが、腕などの末梢部よりも汗の量が多いのです。
体幹部でも特に脊柱近辺では汗の量が多くなります。また、カラダの中で最も多く汗をかくのは額です。
これは、生命を維持するために最も大切な器官であり、なおかつ熱に弱い「脳」の温度を一定に保つために重要な仕組みだと考えられます。
男性と女性で比べると、どの部位でも、男性のほうが女性よりも汗をかく量が多いようです。
体温が上昇して危険と体が判断すると、自然と冷却システム="汗"が作動します。
汗は、蒸発するときに熱を奪って気化しますので、その分温度を下げることができるのです。
1gの水が蒸発するときに必要な熱エネルギーは、0.58kcal(0.67W)、水の温度を1度上げるのに必要なカロリーは1calですから、体重が58kgの女性を仮定すると、100gの汗をかくと、およそ1度体温を下げられるという計算です。
汗の冷却能力の高さは凄いですね。ただし、ここで大事なのは、汗は"蒸発"するときに、熱を奪うということ。
ポイントは"蒸発"です。ただ出ればいいのではなく、"蒸発"してこそ、冷却能力が発揮されるわけですね。
ハイキングにおしぼりを持って行ったとしましょう。濡れたおしぼりをケースに入れたまま置いていても、ぬるいままですが、ケースから出して少し広げると、ぐんぐん冷えていきます。外気に触れたときに、おしぼりの水分が蒸発して熱を奪っているから、です。
蒸発させて汗をかくと、のぼせにくい
汗は、皮膚表面の水蒸気の圧力と、外気の水蒸気の圧力の差に比例して、蒸発します。
皮膚表面の湿度はもともと高いので、外気の湿度が高くなるとその差が少なくなり、汗は蒸発しづらいのです。
お風呂を想像するとわかりやすいかもしれません。
水蒸気をたっぷり含んだお風呂という空間のなかでは、汗をかいてもなかなか蒸発せず、ダラダラ汗が出続けます。
そして、汗は蒸発しないことには、体温は下がりませんから、「あつ〜、のぼせる〜」となるのです。